2022年度日本陸上競技学会 学会賞
陸上競技学会誌Vol.20,2022に掲載された11本の論文について、「新規性、有用性、信頼性、貢献度」の4つの観点から審査した結果、2022年度は茨城大学教育学部の渡邊將司先生が学会賞を獲得されました。
渡邊將司先生、おめでとうございました。

【受賞論文】
渡邊將司(茨城大学教育学部)
中学・高校における混成競技の因子構造とパフォーマンス分析
陸上競技学会誌20:1-8,2022

【抄録】
本研究の目的は,中学および高校における混成競技の因子構造とパフォーマンス(総合得点)に影響する要因を明らかにすることであった.対象は2017~2019年度の中学四種競技および高校八種/七種競技において全国ランキング100位以内にランクインされたデータを用いた.因子分析の結果,すべての混成競技の第1因子には短距離走・ハードル・走幅跳といったスプリント能力が関連する種目が抽出された.それらで構成種目の半分を占めていたことから,混成競技はスプリント能力に依存する構成であることが明らかとなった.総合得点と各種目パフォーマンスとの関係をみると,上位群はすべての種目において,総合得点と弱から中程度の相関関係を示した.一方で非上位群は,全体的に相関関係が低かった.つまり高い総合得点を獲得するためには,すべての種目のパフォーマンスを向上させることが不可欠であることが明らかとなった.

【受賞者コメント】
この度は,名誉ある学会賞を頂き大変光栄に存じます。
混成競技に関する研究は少なく,特に若い選手を対象にした研究は限られています。今回の研究結果が,混成競技に取り組む中高生のパフォーマンス向上だけでなく,混成競技者の人口拡大にもつながるようになりましたら幸いです。

watanabe

渡邊將司先生

日本陸上競技学会第21回大会最優秀発表賞
日本陸上競技学会第21回大会では、陸上競技に関する様々な領域から37の研究発表がなされましたが、その中で日本体育大学大学院の黒﨑渥矢さんが最優秀発表賞を獲得されました。
黒﨑さん、おめでとうございました。

【受賞研究発表】
10000mレースにおける男子長距離走者の走動作タイプについて
〇黒﨑渥矢(日本体育大学大学院)、新垣太世(日本体育大学大学院)、沼津直樹(日本体育大学)、杉田正明(日本体育大学)、阿江通良(日本体育大学)

【抄録】
本研究の目的は,公式の男子10000m走のレースにおける日本人男子長距離走選手の走動作タイプを新たに考案した対数ステップ長比および対数ステップ頻度比を用いて,レース前半(4150m地点)と後半(8150m地点)における走動作タイプの変化を明らかにすることである.2次元動作分析法を用いてビデオカメラを120Hzに設定し一流男子選手18名と学生男子選手16名の走動作の分析を行った.またタイプ分けには,対数ステップ長比および対数ステップ頻度比を用いて+1SD以上をSL-type(ステップ長タイプ),SF-type(ステップ頻度タイプ)としSL,SF-typeにあてはまらない選手はMid-type(中間タイプ)とした.その結果,1)走動作のタイプは,ステップ長タイプ(SL),ステップ頻度タイプ(SF),中間タイプ(Mid)の3種類に分類された.2)レースの進行に伴って走動作タイプが変化した走者(移行型)は13名,走動作タイプが変化しなかった走者(固定型)は21名であり,固定型の方が多かった.3)走速度の低下が最も大きかったのはMid-SF-type(n=2)であり4150m地点と比較して8150m地点では対数ステップ長比を小さくして対数ステップ頻度比を大きくしていたことからステップ頻度重視の走法に変化していたと考えられる.4)走速度の増加が最も大きかったのはSF-Mid-type(n=4)であり4150m地点と比較して8150m地点では対数ステップ長比を大きくして対数ステップ頻度比を小さくしていたことからステップ長重視の走法に変化していたと考えられる.

【受賞者コメント】
この度は,日本陸上競技学会第21回大会にて多くの素晴らしい発表がある中で最優秀発表賞を賜りましたこと誠に光栄に存じます.本発表に至るまで懇切丁寧な指導をして下さいました,阿江通良先生に深く感謝いたします.また一流長距離走選手のデータの使用を快諾して頂きました日本陸上競技連盟科学委員会および科学委員長の杉田正明氏に深くお礼を申し上げます.
今後の陸上界の発展に貢献できるように励んでいきたいと存じます.

kurosaki

黒﨑渥矢さん 阿江通良先生と杉田正明先生と一緒に